炎上中の牛乳石鹸のCM『さ、洗い流そ。』ご覧になりましたか?

炎上のコメントをネットで読んで見ると「主人公の男性の行動への批判」「妻の夫に対する言動

への批判」「CM内の価値観の古さ」への批判が主なものでした。

その他に目立ったのが「意味がわからない」という感想。これまでの他の炎上CMではあまりなかった意見です。

 

たしかにこのCM、とっても映画的な表現がされていて、意味や制作意図がわかりにくいです。

通常、CMというのはわかりやすく誤解のない表現をするものですけど、このCMはあえてそれをしていない。

こんだけ最初から最後まで男性の無表情をクローズアップするなんて、CMの映像表現としては異例です。

 

CMの内容を大きく変えなくても、意味をわかりやすくする方法はなんぼでもあります。

たとえば最後の「さ、洗い流そ。」

CMでは男性の無表情にナレーションでかぶせています。

だからわかりにくい。

 

これを男性が「さ、洗い流そ。」と言いながら石鹸で顔を洗ってちょっと微笑む、という場面にする。

これだけでも「意味がわからない」という感想はだいぶん減ったんじゃないかなぁと思います。

 

本当に意味がわかったどうかは関係ありません。

人は感覚で見ていますから、登場人物の感情と映像表現が一致すればなんとなく納得してしまうのです。

でも、それをしない。あえて意味をわからなくしている。

 

CMとしての効果はともかく、一本の映像作品として観客に解釈を投げかけているという点で、優れた作品です。

でもこれ、2時間の映画じゃなくって2分間のCMですからね。

このギャップが炎上の原因のひとつなのかもしれません。

 

 

映像に関わっていた立場から、このCMへの代表的な批判への批判をします。

 

このCMでの男性の行動への批判は多いです。

批判の多い行動の中で、ほとんどの人が勇み足をしている部分があります。

「妻からの電話に出ないなんて」

 

居酒屋でかかってきた男性への電話。

部下に気にされながらも「うん、いい」と男性はそれに出ません。

みなさん、例外なくこの電話を『妻からの電話』だと思いこんでいます。

 

なんで妻からの電話だと思ったんですか?

映像では『妻からの電話』だとは確定できません。

この場面でスマホの画面は映っていませんし妻が電話をけているカットもありませんから。

妻からの電話だったのかもしれない。でも妻じゃなくて他の人からの電話だったのかもしれない。

 

妻からの電話じゃなかったとしたら「妻からの電話に出ないなんて」という男性への批判は的外れな上に濡れ衣です。

もし、上司からの電話だとしたら?

部下との時間を大事にするためあえて自分が不興をこうむるのを覚悟で、出なかったのかもしれません。

残業を命じられて家族の元に帰る時間がさらに遅くなるのをさけるために、出なかったのかもしれません。

 

なぜみんな『妻からの電話』だと思い込んでしまうのか。

これには伏線があります。

その直前に職場で男性にメッセージを受信する場面、バイブ音に続けてスマホの画面がアップになり妻からのメッセージだとわかります。

居酒屋で電話がかかってきたときも同じバイブ音です。

だから観客は、前後の事情から勝手に解釈して、これも妻からの電話だと思い込んでしまう。映ってもいないスマホ画面に妻を見たような気になってしまうんです。

 

「この場面で妻からの電話にでないなんて信じられない!」

そうじゃなくって、信じられないのは自分の目ですよ。

 

このCMに自身の「であるべき」という考えを重ねて批判するのはいいです。

だけどその前に「どんだけ人が思い込みやすいか」ということは知っておいたほうがいい。

この種の映像トラップ、世の中にたくさんあります。

少なくともこのCMの映像作家は計算づくでやってはります。

 

 

 


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和田 憲明

和田 憲明

副理事長 / マジックパパファザーリング・ジャパン関西
保育園園長、元主夫。娘の誕生を機に主夫となり保育士資格を取得。FJKでは初代理事長、現副理事長を務める。特技は手品、趣味はSF・特撮・アニメのオタク系パパ。 [⇒詳細プロフィール]