『ハイジ兄ちゃんとの一期一会』和田憲明

 

あれはまだ父ちゃんが母ちゃんと出会う1年前、20世紀が終わる年に独りで8日間スイスに行ったときの話。

当時バックパッカーに憧れていた父ちゃんは、1998年に中国、1999年にタイにそれぞれ8日間ずつ独り旅をしました。

そして2000年、今年はインドに挑戦と考えていたところに弟まーくんからの依頼。

 

「兄ちゃん、アルプスで2人だけで結婚式挙げるから、撮影しに来てえな」

テレビカメラマンをしていた父ちゃんは、よっしゃまかしとき!と、当時最新のデジタルムービーカメラを手に、スイスに旅立ったのでした。

 

新婚夫婦の邪魔をしないように、弟夫妻とは別ルートを選びました。

日本からの飛行機でスイスの西の街、フランスの隣のジュネーブで入国。高山列車でスイスの真ん中のアルプス山上へ。そこで弟夫婦と合流し結婚式の撮影をしてすぐバイバイ。再び高山列車でスイス北東の街、ドイツの隣のチューリッヒに抜け、日本行きの飛行機に乗って帰るプラン。(弟夫婦はこの反対)

 

ワクワクして降り立ったジュネーブはフランス語が飛び交うヨーロッパの街でした。でも次のアルプス山上はめっちゃ観光地。

当時は日本人のおじちゃんおばちゃんが多くて、やたらと日本語の幟が目について(「うどん」とか!)ちょっと幻滅したけど、それを抜けたらチューリッヒまでずっとドイツ語に。なんと、スイス語というものはないのですよ。

大国に挟まれた小さな国スイス。島国の日本では体験し難い内陸の文化を感じました。

 

文化といえばアルプスの少女ハイジ。スイスといえばハイジやろ! とアニメのイメージを持って入ったアルプスですが、スイス本国ではアニメのハイジは人気がないそうで。

それでもアルプス山上からパラグライダーで飛んだときのこと。1人で飛ぶんじゃなくて、現地の兄ちゃんが操縦してくれる2人乗りのタンデムフライトというヤツです。

 

アルプスの上空から眺めた景色はすばらしくって、アニメにでてきたような山小屋が本当にぽつんぽつんとある。

操縦してくれてた兄ちゃんがそのうちの一軒を指差して、英語で「あれ、オレの家」って。

その言葉がウソがホンマかは知らんけど、この瞬間が弟の結婚式以上の思い出です(曝)。

 

同じ場所で同じ人と過ごすのも快適かもしれない。だけどあえてそこから一歩外にでる。

一生一度しか行かない場所での一生一度しか会わない人の何気ない一言。これが父ちゃんの記憶に残るスイス。

おわり

 

残念ながら今年の応募は見送りますが、書いた作文だけ公開します。

【募集テーマ】父子旅を通じて、父から子に伝えたいこと

【文字数】1000字以内

【締め切り】平成29年5月29日(月)

書くと蘇る風景、空気、味、言葉、気持ち。

そしてささいだけど一番印象的な記憶を我が子に。

 


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和田 憲明

副理事長 / マジックパパファザーリング・ジャパン関西
マジックパパ代表、主夫。娘の誕生を機に主夫となり保育士資格を取得。FJKでは初代理事長、現副理事長を務める。特技は手品、趣味はSF・特撮・アニメのオタク系パパ。 [⇒詳細プロフィール]