ずっとボールから逃げていた。ソフトボールから。
でも、そのボールに向かってみた。きっかけはPTA。10月後半の日曜日、小中学校と地域運動会が一段落したころ、市内のPTA会員親睦のためのソフトボール大会が開催された。
僕は中学校のPTA会長として出場した。
正直、内心ではあんまり出たくないなと思っていた。その遠因は小学生時代に遡る。
当時の多くの地域がそうだったように、地元京都市の町内でもソフトボールは盛んだった。僕の父もチームに入ってプレーしていた。男子は小学生になったらとりあえず全員ソフトボールをするという流れがあった。
日曜の朝6時は河川敷に集合し、町内のおじさん監督のソフトボールチームで練習することになんとなくなっていた。
内気でインドアで運動音痴だった僕は、その流れが心の底から嫌だった。だから3日で行かなくなった。母親にはソフトボールをすると言って家を出て、その実は河川敷手前の公園の土管の中にいた。
苦手なソフトボールを無理やりするよりも、独りで恐竜の本を眺めているほうがどれだけ心が休まったか。
そうやって回避したソフトボールだったけれど、高校でまたヤツは接近して来た。体育の授業だ。
なぜかまた男子はソフトボール。校庭ではなくわざわざバスで専用グラウンドに出かけて。小学校のときのボランティアチームと違い、授業なので避けるわけにもいかない。
高校生になってもあいかわらず内気でインドアで運動音痴だった僕は、打てず、捕れず、投げられずの三重苦。とうぜんながらクラスのチームのお荷物で、ますますソフトボールが嫌いになった。
その20年後、僕は小学校のPTA会長になった。そこでもまたソフトボールは近づいてきた。PTAのソフトボール大会。僕は出場しなかった。ソフトボールが盛んでない小学校区だったこと、辞退の意向にとくに異論がなかったことをいいことに、会長権限で出場を学校ごと辞退したのだ。
避けられてよかった!その時心から思った。
さらに2年後の今年、中学校のPTA会長になった。当然ながらまたPTA親睦のためのソフトボール大会はある。
2つの小学校から生徒が上がる中学校。合流したもう一つの小学校区はソフトボールが盛んな地域。中学校PTAとして昨年も出場していて、楽しみにしている保護者がたくさんいる。今度ばかりはPTA会長の権限で出場を辞退するというわけにもいかなかった。
日曜日の朝、僕は苦手意識を引きずったままグラウンドに向かった。そして出場したソフトボール、生まれて初めての試合出場。それは……すばらしく楽しかった!
保護者と先生とソフトボール協会の監督で構成された男女混成チーム。経験者7割、未経験者3割。僕が「苦手なんです」と正直に言うと、経験者のパパは丁寧に教えてくれた。ボールの握り方、受け方、バットの振り方。監督をしてくれたソフトボール協会の男性は無理のないタイミング、無理のないポジションで未経験者たちを出場させてくれた。
各チームのなかでいちばん寄せ集め感が強かった自分のチームは1試合も勝つことができなかった。だけど素晴らしく面白い体験だった。お酒が弱いので他の機会でもあまり行かない打ち上げの飲み会にまで行ってしまった。
チームスポーツの爽快感を初めて知った44歳の秋。
苦手で避けていたことを大人になってからすると、想定外の楽しさがある。
そのきっかけとして無理やり地域やPTAの役員をやってみるのはアリかもしれない。
和田 憲明
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