90分の夜の会議が終わったとき、嘘のように心晴れ晴れだった。
その夜は市内24校のPTA会長が集まるPTA連合会議。中学校PTA会長の私は月に一度出席している。その会議中にしなくてはいけない作業があった。1ヶ月先に迫るPTA大会、親子で楽しむスタンプラリーの景品であるオリジナル缶バッジを組み立てること。
オリジナル缶バッジを作るキットがある。缶バッジの材料とそれをガッチャンと組み合わせる万力のような機械だ。24人のPTA会長が出席する会議。その会議中にも誰かが組み立てを進めないと1000個の缶バッジ完成に間に合わない。でもガッチャンとする機械はひとつだけ。たまたまその日、口の形に並べられた机の角の席に座った僕のとなりに、その機械があった。
缶バッジ作りは過去にやったことがある。僕は会議を聞き流したり、ときに意見したりしながら、90分間ひたすら缶バッジを作り続けた。片方に安全ピンのついたバッジの裏側をセット。反対側に缶バッジの表、缶バッジの絵、外側をコーティングするフィルムをセット。そして表をガッチャン。反転させて裏の安全ピンといっしょにガッチャン。これで一つ出来上がり。90分の間に150個以上は作ったと思う。
夢中で作っているうちに、いろいろと抱えていた悩み、問題、ストレスが嘘のようになくなっていた。悩みには単純作業がいいと聞くが、これほどその効果を感じたことはなかった。しかもささやかながらPTA大会のお役に立てるし、一緒に会議に参加していたPTA会長たちから「和田会長、会議の間ずっとありがとうございました」と感謝してもらえる。
いや、普通に会議に参加しているよりもずっと楽しかったし、ガッチャンしながら聞く会議はとても新鮮。たまに手を止めて意見もさせていただいたので、これまで同じ会議に参加した中でいちばん充実していた。心理的にも物理的にも人間関係的にも効果が絶大な単純作業、生活の中に他にないか探してみる。

和田 憲明

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