この世の終わりかと思うくらいの号泣だった。毎週火曜は次女の体操教室の日。夜9時前に迎えに行くと、「うえっ、うえっ」という嗚咽が体育館の外まで聞こえた。中を覗くと次女が体育館の隅で三角座りでうなだれ、タオルで顔を押さえて肩をヒクヒクさせていた。その横では学生の女性コーチが次女を励ましていた。

女性コーチは僕を見て会釈をすると立ち上がり、「落ち着いたら一緒に片付けよう」と次女に声をかけてから体操器具の方に歩いて行った。

僕はしばらく次女の後ろから彼女のヒクヒクしている背中をながめていた。ほどなく片付けが始まった。次女はタオルから顔を上げて立ち上がり、フラフラと体操器具の方に歩いて行った。まだ肩はヒクヒクしていて号泣の真っ最中。それでも1枚マットをたたんで、コーチと2人で倉庫に片付けに行った。

終了の挨拶中も、コーチと別れて自転車に乗っても、まだ次女の涙は止まらない。自転車で並走しながら次女に聞いた。「今日なにやってたん?」「……平均台」「なんで泣いてたん?」「……わからへん」「そうか……」別に次の言葉もなかったし、言葉を重ねる必要もなかったので、あとは無言のまま家についた。

2人で自転車を停めてリビングに入る。キッチンから次女の涙を見つけた妻が言った。「どうしたん?手洗いうがいしたらママのとこおいで。聞いたるわ」。次女は素直に洗面所に行ってからコタツで待っていた妻の隣に座った。

「どうしたん?」「なんで泣いてんの?」「誰かに何か言われたん?」「どこか痛いん?」「悔しかったん?」少し離れたダイニングテーブルから聞いていた僕は、よくそれだけ質問が出てくるもんだと感心した。妻の質問に対する次女の回答の声は小さくて聞こえなかった。でも次女がなぜ泣いていたのかはなんとなくわかった。平均台で新しい技ができなくて悔しかったらしい。

そして妻の最後の言葉にうなづくのが見えた。その妻の言葉は「悔しくて泣くのはええことや」。つくづく思うのだけれど、夫婦で我が子に対するアプローチは全然違う。僕は迎えに言って無言で帰ってくるだけ。妻は次女が泣いた理由を言語化して肯定する。

しばらくして、風呂から上がってきた長女が次女の様子を見て「また泣いたん!?」と呆れ声で言った。つくづく、同じ親の子どもでも性格は全然違うとあらためて実感する。長女は悔し泣きなんてしたことがない子。
「私、70パーセントで生きてるねん」。そう言う長女は来月受験。大丈夫か?


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和田 憲明

和田 憲明

副理事長 / マジックパパファザーリング・ジャパン関西
マジックパパ代表、主夫。娘の誕生を機に主夫となり保育士資格を取得。FJKでは初代理事長、現副理事長を務める。特技は手品、趣味はSF・特撮・アニメのオタク系パパ。 [⇒詳細プロフィール]