宮崎駿監督の『となりのトトロ』は欧米でも大人気だ。しかし、となりのトトロの中に1箇所だけ、欧米人には受け入れにくい場面があるそうだ。それは一般の日本人にすればとても微笑ましいシーン。親子の入浴場面だ。まずは、子どもの裸が受け入れられない。とくに10歳のさつきが湯船に入る前に泡のついた身体にかかり湯をして身体のラインが露わになるのは、まるで幼児ポルノ。
日本人からすれば宮崎駿のアニメは子ども向けではなく、老若男女が見る国民的アニメであり芸術作品なんだけど、欧米文化では子どもの裸に対するタブー感は強い。さらにである、草壁家は母親が入院中で、父と娘で暮らしている。幼児の裸が堂々と描かれている入浴場面、その上に父親と娘という異性の親子が混浴しているなんてとんでもない!
文化の違いと言ってしまえばそれまでだけど、娘とずっと風呂に入ってきた日本人の父親の僕としては、ちょっと待ってと言いたくなる。幼児期は8割、父娘で入浴していた。髪を洗って身体を洗ってお風呂用のおもちゃで湯船で遊んだ。小学校に上がったら頻度は減った。けれども一緒に入った時は小学校での出来事をいろいろ聞いた。長女とは背中に書いた文字を当てるゲームが好きだった。次女とはなぞなぞとクイズとしりとりをよくした。
娘の前で夫婦喧嘩をしてしまったときは、風呂で「ごめん、パパが悪かってん。また仲直りするから大丈夫やで」とフォローした。(これは妻も同じように風呂でしていたそうだ)
これらの経験をタブーとされるのは、なんだか自分の子育てを否定されたような気なるのが正直なところだ。異性の子どもといつまで一緒に風呂に入るのかは、家庭によって親子によって様々だ。幼児のうちに入るのをやめたという親子もいれば、ずいぶん大きくなっても一緒に入っているという親子もいる。
和田家の場合は、娘の成長によって自然と一緒に入らなくなった。長女の場合は長女から離れていった。「もうパパとは一緒に入らへんし」と切り出されたのは10歳の長女の誕生日だ。次女の場合は11歳。身体つきが女性っぽくなったのを認めた時、僕の方から次女に告げた。「もうええよな」と。いずれにせよ、別れは突然だ。今当然のように娘たちと一緒にやっていることも、いつ終わるか、いつ一緒にしなくなるかわからない。
ひとつだけ言えるのは僕は子育てを十分に、悔いのないようにしてきたということ。去年の年末、次女に「もうええよな」と言った自分は満足していたのだ。悔いはない。正直、ちょっと寂しくはあるけれど。


The following two tabs change content below.

和田 憲明

副理事長 / マジックパパファザーリング・ジャパン関西
マジックパパ代表、主夫。娘の誕生を機に主夫となり保育士資格を取得。FJKでは初代理事長、現副理事長を務める。特技は手品、趣味はSF・特撮・アニメのオタク系パパ。 [⇒詳細プロフィール]