戦艦の一室で言い争いをしてるの男二人の周りにたくさんの大人が集まってガヤガヤしている。新作アニメ『宇宙戦艦ヤマト2022・愛の戦士たち』の一場面だ。この作品は1978年に公開された『さらば宇宙戦艦ヤマト・愛の戦士たち』のリメイク作品。このオリジナル版でも、同じ男二人は喧嘩をしていた。そしてその周りを大人が取り巻いて喧嘩を止めようとガヤガヤしていた。でもこっちの喧嘩は殴り合い。限られた戦艦のスペース、そして限られたクルーの中で、指揮官級の男2人が殴り合いをしていたらそりゃあクルーは集まって喧嘩を止めようとするだろう。

しかし、今回のリメイク作品は口喧嘩。それを取り巻く大人がガヤガヤしているこの場面で僕は違和感を覚えた。口げんかしている男2人を大の大人がたくさんで囲むか?その場所は任務中の戦艦。殴り合っているのならまだしも、口げんかである。いや、殴り合った過去作品を肯定しているわけではない。殴り合わない方法で喧嘩したほうがいいに決まっている、と元いじめられっ子の僕は思う。しかし、口げんかである。言い方を変えれば意見交換、指揮官級の会議だ。なのに、最初その口げんかを目撃したクルーは大騒ぎで触れ回る。
「大変!AさんとBさんがC室で言い争ってます!!」それでクルーが集まって大騒ぎ。さらに2人の口げんかを止めようとする。それも口だけで。「やめてくださいAさんも、Bさんも」繰り返すが口げんかである。つかみ合ったり殴り合ったりしているわけではない。平和な戦艦だ、と思った。

この口げんかの最後、片方の男はとうとう拳で殴る。でも殴ったのは相手の男ではない。その横の機械だ。機械は透明のパネル張り。そのパネルに白いヒビが入る描写でその喧嘩は終わる。平和な戦艦と馬鹿にしてはいけない。今作のスタッフは現代のコンプライアンスを守りながらも、きっちりと男の暴力性を描いたのだ。暴力は物を壊すという結果もきっちりと表現して。
もちろん、口げんかより殴り合い、パネルを殴るよりも相手の顔を殴った方が映像的に面白いしドラマチックだ。でも現代でそれは許されない。メジャーなアニメ作品内で暴力で意見の相違を解決することを許し肯定していると表現することが許されない。動きのあるドラマチックな映像を作りたい欲望と、コンプライアンスを守るという縛り。パネルを殴ってヒビを入れるという表現はその2つの引っ張り合いの見事な着地点だ。

似たことはサザエさんの描写からも感じる。昔のサザエさんのカツオとワカメの喧嘩はものを引っ張り合ったり、押し合ったりのアクションがあった。今の喧嘩はほとんど口げんかでアクションがない。動きが面白くないのだ。70年の大阪万博を舞台にした回もそうだった。今からでは想像できないけれど、タラちゃんが実に悪ガキで、勝手に万博会場をほっつき歩いて迷子になるだけでなく、いろんな展示館でいたずらまでするのだ。今のタラちゃんの動きより、当時のタラちゃんの動きの方がはるかに魅力的だ。

ヤマトと違うのはその上に面白くする工夫を感じられないこと。常にただただ言い争いだけの地味な絵になっている。それはサザエさんの世界とその支持者だけが満足な演出なんじゃないか。でもサザエさんの演出家にも作家として面白いアニメの動きを作りたいという欲望はあるはず。数年後の大阪万博の演出をするときは70年の大阪万博の回を見てから取り組んでほしい。次の大阪万博でタラちゃんがどんな動きをするかを期待している。
2025年まで、サザエさんが続いていますように。もちろん宇宙戦艦ヤマトも!

©Fuji Television Network, inc.

©️宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会


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和田 憲明

和田 憲明

副理事長 / マジックパパファザーリング・ジャパン関西
マジックパパ代表、主夫。娘の誕生を機に主夫となり保育士資格を取得。FJKでは初代理事長、現副理事長を務める。特技は手品、趣味はSF・特撮・アニメのオタク系パパ。 [⇒詳細プロフィール]