ネウボラは日本で馴染むのかな?

篠田です。

今、フィンランドの子育て支援策である「ネウボラ」について勉強しています。

北欧での合計特殊出生率が高い理由として、様々な手厚い福祉政策といわれていますが、日本では、これまでから少子化対策というと、北欧モデルをお手本にすることが多いですよね。

そうしたなかで、フィンランドの「ネウボラ」について、少子化対策の新たな取り組みとして、少しずつ注目され始め、いくつかの自治体で取り組みが始まっています。

ネウボラ?

さて、このネウボラとは、そもそもどういったものなんでしょう。

「ネウボラ」と聞くと「育児パッケージ」をイメージします。
僕もそれがネウボラだと思っていましたし、自治体の取り組みでも注目を集めているのもこれです。

ただ、これは一つの側面であって、ネウボラそのものではありません。

フィンランド語で「ネウボ」はアドバイス、「ラ」は場所を意味します。
つまり、「ネウボラ」とは「アドバイスの場所」ということなんです。

これだけ見ると、パッとしませんね。

アドバイスを受けるということに関して言うならば、すでに日本でも子育て支援センターや保健センターなど、相談機関はたくさんあります。

なのに、フィンランドのように高い合計特殊出生率を実現できていません。
(フィンランド:1.8、日本:1.43)

ネウボラの親にとっての利点

個人的に考えるポイントとしては、ネウボラは親にとって以下の点で非常にありがたい存在です。

①「固定かつ長期一貫の相談役」

妊娠、出産、医療、診察、パートナーシップ、健診、発達相談、予防接種など、あらゆる子育てにかかる相談を、一人の「ネウボラおばさん」と呼ばれる相談役にお願いできる。

日本では、それぞれで窓口が違うので、当事者みずからあれにこれにと足を運ばなければなりません。

それを考えると、これほど安心できる存在はそうありません。

②完全予約制で待ち時間なしの対応

フィンランドには900カ所以上のネウボラがあると言われています。

どこのネウボラも、予約対応で待ち時間がないと言います。

日本では予約しても待たされることもしばしば。

妊娠・子育て中の人にとっては、とても安心できる仕組みではないでしょうか。

日本での実現の難しさ

これらを フィンランドでは国の事業として行っていますが、日本では残念ながらこのプログラムを公共化するのは以下の点で難しいと思います。

①人員の固定的配置の困難さ

行政では、固定的な人事配置を嫌う傾向があります。

また、次の②につながりますが、1カ所限定の専門職を雇用、育成するには予算がたりません。

②地方固有の財源の少なさ

やるとなるとおそらく実施主体は地方自治体になると思いますが、国からの資金提供がなければ結果的に持ち出しになるため、財政状況の悪い多くの自治体ではまぁ難しいです。

やるならばNPOと企業で

先進的な一部の自治体ではスタートしていますが、このままでは流行で終わってしまいます。

本当に馴染ませるためには、ネウボラの本質的なポイントを押さえながら、日本の公共で難しいポイントをクリアしなければなりません。

つまり、固定的人員の確保と手厚さ、そして資金繰りです。

僕は、これらをクリアするには、NPOのチカラが何よりも必要だと思っています。

NPOも資金繰りがいいわけではありませんが、少なくとも、フィンランドで上手くいっているポイントはクリアできるはずです。

あとは、ソーシャルセクターならではの資金調達術を上手く駆使すれば・・・。

また、長期一貫の相談という点においては、日本企業も忘れてはいけないと思います。
企業のなかには、すでに長期的な信頼関係がたくさんあるはずです。

それを企業が自社財産として認識することができれば、フィンランドとは違った形で目指す姿を実現できるのではないでしょうか。

僕が「ソーシャルビジネスプランコンペedge2016」で提案した企画はまさにこれです。

切り口はパパでしたが、目指すゴールは安心できてワクワクする子育てを実現することです。
それは、行政に頼らなくてもできる方法がきっとあるはず。

ファザーリング・ジャパン関西は、引き続きゴールを目指して取り組んでいきます。

今日も無事に更新中。


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篠田 厚志

理事長 / おやこヒッチハイカーファザーリング・ジャパン関西
三児の父親。安定の大阪府庁を退職し、NPOの世界へ。 父親の子育てはやれと言われてやるもんじゃなく、できる仕組みを作ることが大切。「父親の子育てをヤバくする」をミッションに活動するファザーリング・ジャパン関西の理事長を務める。[⇒詳細プロフィール]