この文章は2000文字を20分で書きました。

 

好きなものについて書く。僕がそれに迷わなくなったのには2つのきっかけがある。

ひとつは小説『BISビブリオバトル』を読んだこと。この小説からは書く動機をもらった。もうひとつは『天狼院ライティング・ゼミ』を受講したこと。このゼミからは書く機会と書く方法をもらった。

『BISビブリオバトル』はSF作家による青春小説。SF小説ではない。ビブリオバトルという現実にある書評合戦イベントを題材に、学校を舞台にしたお話。

主人公は高校生の少女と少年。少女はSFオタクである。あるきっかけで少女と少年は出会う。出会った初っ端から少女は自分の好きなSF小説のことを少年に喋りまくる。しかし、少年はフィクションをまともな本とは認めていない。現実の社会問題をあぶり出し、人々を啓蒙するノンフィクションこそが価値のある本だという信念を持っている。

少年に誘われて、好きなSF小説のことを好きなだけ喋れればいいとビブリオバトル部に入部した少女。ビブリオバトル部の個性豊かな部員たちとの交流、そしてビブリオバトルの実践を通して、いつしか少女の目的は「少年にSF小説を読ませること」に変わっていく。

僕が何よりも感動したのは少女のSFにかける熱量の高さだ。アッチアチである。今どき『フェンデッセンの宇宙』という戦前に書かれた海外SF小説、しかも短編集の中の1本に過ぎない小説について何十分も喋れる人がいるだろうか。僕もけっこうSFは読んだほうだが、この短編は中学校のときに図書館で借りて一回読んだきり、この小説で少女が熱く語り始めるまで忘れていた。

いや、喋れる人がいないわけじゃない。聞いてくれる人がいないから喋らないだけだ。しかし少女は少年が聞いていようがいまいが気にしない。「自分の好きなものを目の前のこの人にも読んでほしい!」ただそれだけの動機で1本の短編小説のことを延々と喋るのだ。僕は少女の喋りをきっかけに『フェンデッセンの宇宙』を含むエドモンド・ハミルトンの短編集を購入して再読してしまった。少女の話には僕を動かすだけの熱量があったのだ。

そして『天狼院ライティング・ゼミ』である。このゼミでは週に1本、2000字の原稿を書くという宿題がある。宿題を提出して、それが基準に達していればwebに記事として掲載される。テーマは自由。自由という言葉は耳障りがいいけれど、書く上ではすごく困る。書くテーマを探すところから始めないといけない。テーマを与えてもらってその上で書くほうがはるかに楽だ。最初の6回は毎回テーマ探しに苦労した。うんうんうなりながら5時間以上かけて2000字の記事をなんとか書く。しかし1度も掲載はしてもらえなかった。

7回目の記事を書く前に『BISビブリオバトル』を読んだ。それから迷いがなくなった。僕も少女のように聞いてもらえようがもらえまいが、読んでもらえようがもらえまいが、好きなことについて書こうと決めた。

そして、好きなスターウォーズのことを書いた。するとこれまで越せなかった掲載への高いハードルをクリアできてしまったのだ。「面白いです。スターウォーズへの熱量にやられた感じです」とは講師の評。自分の気分にもドンピシャすぎて舞い上がった。

もう一つは書き方だ。7回目のスターウォーズは掲載されたけど、そのあと3回、また僕は掲載のハードルを越せずにいた。好きなことを書いてはいたけど、なんだか文章がちぐはぐになる。PCの前でうんうん唸る日々が続いた。そんな11回目の記事を書いているさなか受けた講義は『スピードライティング』。その中で15分で2000字を書くというワークがあった。そんな無茶なである。5時間でなんとか2000字を仕上げていたのに、それを15分で。しかも講義会場にはPCはないので、手書きである。しかも、書きあがったらそれをシェアするという。ますます無茶な。

そんな僕の思いをよそに「よーい、ドン」という講師の合図でワークは容赦無くはじまってしまった。僕はA4の白紙に夢中で書いた。構成を考えている暇はない。とにかく頭に浮かんだことを一気呵成に書いていく。15分後、自分のA4用紙を見るとぎっしり文字で埋まっていた。あとで数えて見ると1500字。1分で100字書いた計算になる。

そこで気づいたこと。自分の場合、タイピングするよりも手で書くほうが早い。思考の速度に合っている。タイピングだと文字変換にひっかかったり、改行に迷ったりする。しかし手書きだととにかく前から順番に書いていくしかない。漢字が出てこなければ、ひとまずひらがなで書いておく。改行もしない。

もちろん他人に読める文字じゃないし、一部は自分でも読めない文字になる。でもPCで清書するので、気にする必要はない。この方法を身につけてから、僕はサクサク書けるようになった。

僕の文章を書くコツは、好きなものを書く。手書きする。一気に書く。その3つだけ。

今はA4の白紙とボールペンだけを、常にカバンに入れて持ち歩いている。

 


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和田 憲明

副理事長 / マジックパパファザーリング・ジャパン関西
マジックパパ代表、主夫。娘の誕生を機に主夫となり保育士資格を取得。FJKでは初代理事長、現副理事長を務める。特技は手品、趣味はSF・特撮・アニメのオタク系パパ。 [⇒詳細プロフィール]