大好きなシリーズ絵本がある。『おとうさんはウルトラマン』。ベストセラーを連発する絵本作家、西宮達也さんの作品だ。西宮さんがこのシリーズを書き始めたきっかけは自分がお父さんになったことだという。
自分が子どもの頃好きだった作品を我が子と楽むことは父親になった醍醐味の一つ。それがウルトラマンの絵本だなんて最高じゃないか!
ウルトラマンの魅力はなんと言っても怪獣にある。円谷プロの監修を受けただけあって、シリーズ絵本『おとうさんはウルトラマン』にはウルトラマンのお父さんだけじゃなく、多様な怪獣が登場する。
仮面ライダーの怪人やスーパー戦隊の悪の幹部がおもちゃ屋さんに並ぶことはほとんどないが、ウルトラマンの怪獣は50年前の1作目の怪獣がまだおもちゃ屋さんに並んでいる。ウルトラマンに登場した怪獣たちが多種多様で魅力的だった証拠だ。
絵本の中に描かれているゴモラやレッドキングといった人気怪獣の姿は素直にうれしい。ちょっとマイナーなザラブ星人やギエロン星獣が登場したときは一生懸命思い出したり、子どもと一緒にスマホで検索してみる。これもまた楽しい。
シリーズ物は、1作目が一番面白くて続編がだんだん面白く無くなっていくいということはよくある。しかし、この絵本シリーズの中で僕がダントツに好きなのは続編『帰ってきたお父さんはウルトラマン』だ。
1作目は『おとうさんはウルトラマン』。これはもちろん悪くない。ウルトラマンに息子がいたらという設定で、作者の西宮達也さんの理想の父親像が作中のウルトラマンに投影され投影され、その息子への想いの強さに感動する。
続く『パパはウルトラセブン』。これも好きだ。ウルトラマンと違うのはセブンが女の子の父親であること。しかも作中で妹が産まれる。僕の娘も姉妹だ。姉妹の父親という立場はまさに自分と一緒。まるで恋人のように娘に甘く接するセブン父さんにママが意見するのもウチと一緒。僕自身めちゃくちゃ共感して楽しんだし、ウチの娘たちがシリーズでいちばん楽しんだのも『セブン』だ。
しかし、理想の父親像の『ウルトラマン』、共感できる『ウルトラセブン』を越えて、父親としての僕が一番好きなのが『帰ってきたおとうさんはウルトラマン』なのである。
『帰ってきた』にはウルトラマンの父子に加えて、もう人組みの父子が登場する。そのお父子はなんとバルタン星人。
作品には2人のお父さんが交互に登場する。ウルトラマンのおとうさんは厳しく優しく、仕事も家庭も頑張るある意味「理想的」なお父さんだ。
ウルトラ父さんは仕事に真剣に取り組む。ちょっと体調が悪くても頑張って出動し、怪獣を倒すことに成功する。疲れきって家に帰っても子どもの教育には手を抜かない。しかも、それを自分では全く誇らないという謙虚な面を持っている。
バルタン星人のお父さんはそれとは対照的だ。理想にはほど遠いお父さん。仕事が苦手でいつも地球侵略に失敗する。疲れて家に……帰らない。バーに立ち寄ってしまう。そこで怪獣仲間のゼットンに愚痴を言って憂さ晴らしするのだ。翌日ちょっと熱が出ると地球侵略を休んだりする怠け者でもある。
バルタン父さんは子どもの教育もしている。しかしこれもうまくいかない。子どもの手本になれないから。
そんな対照的な二人のお父さん。だけど共通点もある。
それは子どもの運動会は休まないこと。ウルトラ父さんは仕事も運動会も「なにがなんでもやすまない」
バルタン父さんは仕事は休むけど運動会は「なにがなんでもやすまない」のだ。
この絵本の最後のページは息子たちからのこんな言葉で締めくくられている。
「おとうさんはすてき。おとうさんはバルタン星人」
「おとうさんはすごい。おとうさんはウルトラマン」
ウルトラマンのお父さんはすごい。ウルトラマンのお父さんは仕事や教育に熱心だけど、子どもと遊ぶことにも手を抜かないのだ。だから子どもから尊敬される。
バルタンのお父さんはある意味どうしようもない。怠け者で仕事ができなくて息子の教育もできない。それでも子どもにとっては自分のために一生懸命やってくれるすてきな憧れのお父さんなのだ。
この絵本を読むと父親としての自分に少し自信がつく。仕事でも家庭でもいろいろなことが起こっていろいろうまく行かない。それでも子どものためになんとかやろうとしている自分。その姿をバルタン父さんを通して肯定できるのだ。
ウルトラマンの多種多様な怪獣たちが魅力的だったように、お父さん像も多種多様なほうが面白い。
和田 憲明
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