モンスターチェスをやってみたい。最初のスター・ウォーズ『エピソード4・新たなる希望』はのどかな映画だ。正確には波瀾万丈のストーリーの中にのどかな場面を紛れ込ませている。それが緊張と緩和のリズムを作り、スター・ウォーズを安心して楽しめる映画にしている。

最初ののどかなシーンは中古ドロイドを売り歩く原住民と主人公家族の会話だ。奥さんが甥の青年に言う。「(夫に)ドロイドを買うならボッチ語のしゃべれるやつ言っといて」まるで新しい家電の機能を注文しているようだ。「そうじ機を買うならゴミ捨てが簡単なやつにして」実際、スター・ウォーズの世界ではドロイドは家電のようなものなのだろう。夫は原住民とあれこれ会話しながら2台のドロイドを購入する。その後の銀河の運命を決めた決定的な瞬間なのだが、そのシーンはあくまでも日常にすぎない。

叔父から中古ドロイドの手入れを命じられた主人公。ここでものどかなシーンが挟まる。主人公の青年はドロイドをしばしほうっておいて飛行機のおもちゃで遊ぶのだ。「ぶーん」ってまるで子どものように。この飛行機は実際に主人公が乗って飛ばしているものの模型だ。よく見ると背景セットに模型と同じ飛行機の後部がちょっと覗いている。地球でいえば原付バイクみたいなものだろう。気づく観客は少ないけれども、実はこのシーン、映画の重要な設定を説明している。映画のクライマックスで主人公は戦闘機に乗って出撃する。主人公は田舎の農夫。そんな青年がいきなり戦闘機を操縦できるのは不自然だ。でもその戦闘機は青年が遊んでいた飛行機と同じメーカーが作ったもの。だからすんなり操縦できる。それをちょっとしたセットの背景と模型飛行機で表現する。本当を言えばその飛行機で実際に飛んでいる主人公を先に描ければもっとわかりやすかったのかもしれない。しかし制作費の不足でできなかったのだ。主人公が激動の運命に巻き込まれる直前ののどかなシーンだ。

その直後、主人公は同居していた叔父叔母を失い天涯孤独になり、老騎士と友に銀河の激動に巻き込まれていく。激動に巻き込まれた後ものどかなシーンはある。モンスター酒場のシーンだ。楽しげな音楽の中でたくさんのエイリアンが会話を楽しんでいる。主人公たちは星から逃げるための宇宙船とパイロットをスカウトしにその酒場に来た。映画はシリアスな動機で行動する主人公たちの行動を追ながらも、酒場で様々なエイリアンが様々な会話をしている様子をたっぷりと見せてくれる。

もう一つ、特筆すべきのどかなシーンがある。主人公グループがさらわれた姫の母星に向かっている場面。主人公とその師匠が映画のテーマに関わる重要な会話をしているその後ろ。そこでドロイドとエイリアンがゲームをしている。このゲームはさっきの模型飛行機のようにお金をかけていないわけではない。お金も手間も時間もたっぷりとかかる立体アニメーションで、3Dで動くのモンスター同士が戦うチェスのようなゲームを描いている。このゲームこそ何の意味もない。映画の設定やストーリーに何も関わらない。にもかかわらず、最新技術とお金をかけてわざわざこのシーンを作った。スター・ウォーズには様々な惑星の様々な文化が出てくる。冒頭の砂漠の惑星の生活もそうだ。でも生活は実用だけで出来ているのではない。当然その中には娯楽もある。娯楽があるということを何気ない宇宙船移動シーンの重要な会話の背景ではさみこむ。これによって観客はスター・ウォーズ世界の厚みを無意識のうちに感じ取ることが出来る。

その余裕、遊びは続編にも受け継がれている。『エピソード2・クローンの攻撃』では暗殺者がゲームセンターに逃げ込む。もちろんここでもいろんなゲームを楽しんでいるエイリアンたちをたっぷりと見せる。エピソード3・シスの復讐でも主人公の運命を決定づける最も重要な会話が行われるのはサーカスの劇場だ。背景でちゃんとサーカスをやっていて、サーカスにどよめく観客の歓声まで聞こえてくる。

遊びはその世界の文化を厚くする。スター・ウォーズは戦争だけをしている世界ではない。戦争の裏には生活が、生活の中には遊びがある世界だ。ハードな時代にこそ遊ぶ余裕を持とう。これこそが最初のスター・ウォーズで低予算の中からわざわざお金と時間と手間をかけてまでも「遊び」を表現したスター・ウォーズの真骨頂だ。あー、モンスターチェスやってみたい!


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和田 憲明

和田 憲明

副理事長 / マジックパパファザーリング・ジャパン関西
保育園園長、元主夫。娘の誕生を機に主夫となり保育士資格を取得。FJKでは初代理事長、現副理事長を務める。特技は手品、趣味はSF・特撮・アニメのオタク系パパ。 [⇒詳細プロフィール]