あの子もスター・ウォーズ、あの子も、あの子もスター・ウォーズ! 僕は感動していた。シリーズ10年ぶりの新作映画『エピソード7・フォースの覚醒』が公開され大ヒットした翌年、スター・ウォーズが盛り上がっていた時期だ。僕はPTA会長として毎朝校門で子どもたちに「おはよう」の挨拶をしていた。仕事に直行する日はそれなりの服装だけど、週2回くらいの仕事に直行しない日はたいがいスター・ウォーズ関係の服を着ていた。春秋はストームトルーパーのパーカー、夏はヨーダやドロイドのTシャツ、冬はダース・ベイダーのジャンバー。それをみて子どもたちは必ずいじってくれた。「あ、和田パパまたスター・ウォーズ着てる!」

そう言う子どもたちの服のキャラクターもスター・ウォーズ率は高かった。特に夏場のTシャツ。一番多い日は800人の児童のうち27人がスター・ウォーズキャラのTシャツを着ていた。男子だけじゃなく女子の中にも可愛さで人気のBBー8というドロイドのTシャツを着ている子がいた。自分の好みが出てくる小学生、さらにミニオンやディズニーツムツム、スヌーピーにマーベル、ドラゴンボールにワンピースといった強豪たちの中にあってもスター・ウォーズTシャツ率は目立って高かった。

スター・ウォーズは映画のキャラクターとして最初にマーチャンダイジング、版権商売に成功した映画だ。フォースの覚醒から遡ること40年前のスター・ウォーズ第1作を製作中、ジョージ・ルーカスがハリウッドの制作スタジオ、20世紀フォックスの重役に求めたことが2つある。1つは続編の権利。当時からルーカスは最初の3部作のシナリオを完成させていて、さらにその前史を描く3部作の構想も持っていた。それらを金庫にしまって「借金してでもこの続編を作る」と決めていた。だから、続編の権利をスタジオに奪われて勝手なストーリーを作られることを恐れた。

そしてもう一つ要求したのがキャラクター商品の版権だ。当時、映画のキャラクター商品が儲かる商売だなんて、誰も考えていなかった。映画がヒットした瞬間に少し売れたとしても、すぐに売れなくなって不要になる権利。これまでに儲かった実績もない。スタジオの重役はOKした。ルーカスがその2つの権利を手に入れる代わりに自身の監督料の値下げを合わせて提案してきたからだ。

ところが、蓋を開けてみるとスター・ウォーズは大ヒット。格好いいキャラクターやメカ、魅力的なエイリアンたちの世界にアメリカの子どもたちは熱狂した。おもちゃ屋さんに殺到しおもちゃはすぐに売り切れになり、製造も追いつかなくなった。商品化の権利を持っていたケナー社もこれほどの大ヒットは予想しておらず油断をしていたのだ。しかし、アメリカ前途のおもちゃ屋さんからはひっきりなしに注文が入ってくる。ケナー社は苦肉の策をとった。おもちゃはないけれど、おもちゃと引き換えるための券を販売することにしたのだ。その券には「クリスマスまでにお届けします」と書いてあった。

5月に公開された映画のおもちゃがクリスマスまで待たないと手に入らない。これはアメリカの映画界、おもちゃ業界の事件だった。ルーカスに権利を与えた20世紀フォックスの重役2人の首が飛んだとか飛ばないとか……

こうして、版権からの収入で富を得たルーカスは続編の製作に豊富な資金で取り組むことができた。続編の権利燃えているからスタジオから余計な口出しも入らない。こうして、スタジオが作っていたら絶対にできなかった挑戦的な続編、悲劇の名作『エピソード5・帝国の逆襲』が生まれるのだ。それが話題を呼びまた大ヒット。またおもちゃが売れる。その収入でまた挑戦的な続編が作れる。最初の3部作が完成する頃にはルーカスはハリウッドのスタジオの傘下を出て、自分のスタジオ、ルーカスフィルムを作れるまでになった。そして次の三部作『1・2・3』の制作費はハリウッドの資金を入れず、自社の資金だけで作った。『スター・ウォーズシリーズ』はハリウッド映画ではない。史上最大のインディーズ映画とも言えるのだ。

自分のやりたいことをするために目先の監督料を値下げしてでも続編の権利と収入の仕組みを手に入れる。ルーカスの先見の明が今のスター・ウォーズ6部作を作る資金を得ることにつながった。スター・ウォーズは最強のインディーズ映画でもあり、最強の商売映画でもある。


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和田 憲明

和田 憲明

副理事長 / マジックパパファザーリング・ジャパン関西
保育園園長、元主夫。娘の誕生を機に主夫となり保育士資格を取得。FJKでは初代理事長、現副理事長を務める。特技は手品、趣味はSF・特撮・アニメのオタク系パパ。 [⇒詳細プロフィール]